海外でローカライズをする仕事

海外でローカライズをする仕事

私は今、ドイツの会社で日本に関するお仕事をしています。

ざっくり言うと、まだドイツ国内でしか出回っていないおもちゃの日本語版を製作する仕事です。

仕事のプロセスを例えるならば、ゲームのローカライズとほとんど同じ。

唯一異なる点を挙げるならば、ローカライズの上流工程から下流工程まで、
全部社内で完結している点です(しかもドイツで!)

外部委託が無いのでコストが削減できる一方、
あらゆることを全て自分たちでやらないといけないので、かなりの負担が…。

今日は海外で日本のローカライズ業務を行うことについて、お話ししたいと思います。

ローカライズとは

まずはローカライズについて簡単に説明しましょう。

ローカライズというのは、とある国で開発・販売された商品を、
その国以外の人も楽しめるように手を加える作業です

例えばポケモンは世界中で愛されていますが、
ひとつひとつのキャラクターの名前は国によって全然違います(ピカチュウは例外!)。

これはそれぞれの国が自分たちに馴染みやすようローカライズを行った結果です。

ちなみにローカライズは、翻訳や吹き替えのみに限りません。

国によって異なる思想表現の規制があるので、場合によっては
イラスト自体にも変更が加えられたりと、細かなところに対応することが求められます。



満足のいく市場調査ができない

まずはローカライズを始める前に、その商品が開発された国以外で
本当に受け入れられるのか調査しなければなりません。

そこで必要なのが市場調査です。

私が今携わっている商品は子ども向けの普通のおもちゃなので、
国民性や宗教観、あるいは表現の規制まで考える必要はありません。

でも、例えば

その商品は日本でも需要があるか?

日本で発売したらどんな商品が競合になるのか?

小さい子を持つママさんはどんな商品にいくら出すのか?

など、いろんなことを予めリサーチしておく必要があります。

なぜなら、これを最初にやっておかないとローカライズしても売れないからです。

でもここで問題が発生。

ドイツ国内で日本の市場調査をするのって、かなり無理があるんですね。

私たちが手に入る情報は、インターネットからかプライベートの知り合いのみ

その知り合いも、例えばドイツに住んでる日本人のママさんだと話が変わってきます。

海外に住んでいる日本人の方は考え方も少し異なっているため、
私たちのターゲットとする”日本に住む”日本人の声にはなかなかありつけないのです。

日本のアンケート会社に市場調査を頼めば、何かしらの実りはあると思いますが、
私の会社はそれを良しとしなかったので諦めるしかありません。

校閲のプロがいない

市場調査がひと段落ついたら、さっそく翻訳スタートです。

ここからは私の得意分野なので、想像力を働かせながらどんどん訳していきます。

日本に存在しない表現や概念が出てきた時は、違うもので代用したりカットしたり。

この作業は私の本領発揮ゾーンなので、1番楽しいかな。

でもその後がちょっとした問題。

それは言葉の表現や校閲に長けたプロの意見を仰げないことです。

今は会社に日本人がもう1人いるので、その人に校閲をお願いしているのですが、
彼女もその道のプロではないので、もちろん漏れがあります。

また言葉の表現に関して言えば、訳した内容は合っていても、
その表現が幼い子も分かるかどうかは別問題です。

対象年齢に合った言葉のチョイスをしようと心がけるものの、
ついつい私は難しい言葉を使ってしまったり、回りくどい表現をしてしまう癖があります。

というか、どこからが“難しい”のか正確な判断ができないのです。

もし日本にいれば、翻訳された児童書をたくさん読み比べたり、
実際に日本の子どもとお喋りしてみたり、できることがたくさんあります。

でもここドイツでできることと言えば、
youtubeで子ども番組を見たり、絵本の情報サイトで立ち読みするくらい。

どうしても勉強不足になってしまうのは否めません。

声優さんとの仕事がスムーズに進まない

今ローカライズしている商品は音声を扱うおもちゃなので、
もちろんドイツ語から日本語に吹き替える必要があります。

ここで問題になるのが声優さんとのやり取り。

半年以上かけて日本の声優さんを見つけ出したところまではよかったのですが、
いざ仕事を一緒に始めてみると、まあスムーズに進まない…。

ドイツ語の場合は自社の収録スタジオに声優さんを呼んでいるので、
アポイントメントさえ取れればサクサク進みます。

しかし日本語の場合は全てがオンラインでのやり取り

例えば、ノイズがあったりニュアンスが違ったりしたら、
全て指示を文章にし、後日撮り直してもらわなければいけません。

また突然声優さんの都合で納品が遅れたり、
急に連絡が取れなくなってしまっても、私たちは何もできません。

直接顔を合わせて仕事ができないのは仕方がないことですが、
どうしてもやりとりが煩雑になってしまいます。

何かいい解決案はないかと模索しはじめて、はや半年以上経ってしまいました。

日本のイラストレーターとデザイナーがいない

次はイラストやデザインの話。

ローカライズにあたり、イラストの変更やパッケージの翻訳が必要になります。

そこで日本人のイラストレーターやデザイナーを雇うか、という話になりました。

会社の偉い人たちは「必要なし」と判断した模様。

となると、日本用の新しいイラストやデザインは
いつもお世話になっているドイツ人(日本との接点ゼロ)に任せることになります。

ここでどんな問題が発生するかというと、まずデザイン案を100%理解してもらえない

イラストはなんとかイメージ画像を渡すことで、それっぽいものを仕上げてもらえます。

しかし日本語が必要な商品パッケージの話になると、もう彼らは無力。

ぴったりのフォントを見つけるのは私の仕事になってしまい、
改行文字の間隔なども全て私が1からチェックしなければなりません。

「こんなにいろんな種類のフォントを使って、ごちゃごちゃしないの?」
と突っ込まれることもしょっちゅう。

その度に私は「日本はとにかくごちゃごちゃでカラフルなの」と答えます。

ドイツと日本では良しとされるものが違うのです。

ドイツデザインのまま・ゴシック体のみのままでは売れません。

日本での販売計画が今だ白紙

最後のとどめは、日本でどうやって販売するの?という疑問。

今のままでは開発しただけで終わってしまうので、販売ルートを確保する必要があります。

しかし、上司はそれについて深く考えていない様子。

日本で販売するにはいくつか方法があるよ!こういうプロセスが必要だよ!と
以前上司に話したのですが、その時は「今はまだ大丈夫だよ~」の一言。

本当にいいのかな?というか実際に売る気があるのかしら?

たしかにまだプロトタイプの段階なので、
営業の話を日本に持って行くのは早すぎるかもしれません。

が、ちょっとは考えてくれているといいなあ。

開発のフェーズがひと段落ついたら、もう1回掛け合ってみる必要がありそうです。

でもなんで私が販売のことまで心配しないといけないのでしょうか。

私の役目は翻訳をメインとするローカライズ業務。

これからどうするのか、疑問は募るばかりです。

まとめ

今日は海外でローカライズを行うことの現状についてお話ししました。

基本的に私は今の仕事が気に入っていますが、
いろんな分野でのリソース不足に悩まされるのは否めません。

また翻訳に関して言えば、99%は私の責任になります。

いくら語学が得意でも、これでいいのかな?と自信がなくなることもしばしば。

限られた環境でベストな結果が出せるよう、頑張るしかないなあと思いました。